想いの続きを、君に (2)
- 2016/07/28
- 23:50
続きでする。『想いの~』は四つにわけて掲載しますな(・ω・)
***
「カムイ様、カムイ様ですよね!?」
「ツバキさん? どうして、ここに……」
「バルコニーから貴女が見えたんです。あぁ、本当に本物のカムイ様だ……」
驚いている彼女を逃がすまいと、手首を掴んで体ごと引き寄せた。力いっぱい華奢な体を抱き締めると、彼女の芳香が胸いっぱいに広がった。
「夢じゃないんだ、本当に、会えたんだ」
「……あの」
「カムイ様、カムイ様……」
感動で麻痺した頭では、気の利いた言葉なんて出てこなかった。ひたすらに名前を呼んで、離さないように抱き締める事しかできなかった。
「……あの、苦し……」
「嫌です、もう絶対に離しません。もう貴女を離さない」
そう言って更に力を込める。軽く頬ずりすると、彼女の頬が熱を持った。
「カムイ様、今度こそずっと一緒にいましょう。離れないで、ずっと共にいましょう」
「え?」
「俺はしばらく暗夜に常駐するから、貴女が暗夜を離れる必要もありません。今度こそこれからも一緒にいましょう!」
一息でそう告げ、彼女の体を抱き上げた。前みたいに可愛い悲鳴を上げた彼女の頬にしっかりと口付け、住まいにしている建物の方へと歩き出す。
「ちょ、ちょっと待って下さい! どういう事ですか!?」
「そのままの意味ですよ? あぁ、落としてしまうといけないから、あんまり暴れないでください」
「待って下さい! 話を聞いて!」
「話ならいくらでも出来ますよ。これからはずっと一緒なのだから」
「ツバキさん! 待って!」
「待たない」
話を打ち切り、更に歩を進める。しかし、あんまりにも彼女が騒ぐので、大人しくさせるために一度立ち止まって彼女を降ろした。
「どういう事なのか、ちゃんとせつめ・・・っ!!」
大人しくさせるならば、静かにさせるならば、口を塞いでしまうのが一番だ。そう思って、彼女の両頬を包んで強引に口付けた。懐かしい感触に、頭の芯が蕩けていく。
それでも彼女は必死に抵抗してきたので、腕を腰に回してしっかりと抱きしめ口腔に舌を差し込んだ。互いの舌が音を立てて絡んでいき、体の奥が熱を帯び始める。
「ん、ふ……」
彼女の体が震えだした。抵抗する力が弱々しくなってきて、後もうひと押しで彼女は俺に体重を預けてくれるだろう……という所まで来たのが分かった。
「ふぁ……ん……」
ぐらり、と彼女の体が傾いだ。これで連れて帰れる、と喜んで抱き上げようとしたその時、暗器が背中をかすめた。
暗器が飛んできた方を振り向くと、そこには氷のメイドとカムイ様の執事がいた。月が陰った暗い中でもはっきりと分かるくらい、二人とも青筋を立てて怒っているのが分かる。
「何をしているの!?」
「カムイ様、御無事ですか!?」
二人が同時に叫ぶ。そして、どこに持っていたのかと言いたくなるくらいの暗器が俺に向かって放たれた。流石にこれは避けきれないな、と思って覚悟を決めた所で、強い力に引かれて前につんのめった。
「……大丈夫ですか?」
心配顔のカムイ様が、こちらの顔を窺いながらそう告げてくれた。
「ええと、はい」
「そう。よかった」
そう言って淡く微笑んだカムイ様が、俺の腕からするりと抜け出した。そして、殺気立っている臣下たちの方へと駆け寄る。
「二人とも、どうしてここに?」
メイドと執事に話しかける様子が、やはり彼女が王女である事を思い出させた。穢す事など叶わない、どこまでも清らかな、お姫様。
「それはこちらの科白です!」
「そうですよ! 『馬車を降りた後は正面の入口からお入り下さい』とあれほど申し上げましたのに!」
「それなのに、なぜこちらを通ったのですか!?」
「こちらは人気が少ないから、決して近づかれないようにとお伝えしておりましたのに!」
「……すみません、わかりました。わかりましたから、二人とも落ち着いて?」
「そんな悠長にしている場合ですか! もう少しで襲われる所だったのですよ!?」
「おまけに、相手は以前にも貴女を……!」
そんなメイドの叫びは、カムイ様がメイドの名を叫んだ事でかき消された。メイドは、カムイ様からの叱責を受けて、うなだれながら申し訳ございませんと謝罪を口にする。
「お二人が私の事を気遣って下さっている事も、私のためにと一生懸命なのもよく知っていますし、いつもありがたいと感謝しています」
「「カムイ様」」
「でも、この方は……ツバキさんは、今は白夜王国から派遣された大使様です。彼の身に何かあれば、白夜との関係が再び危うくなる恐れがあるんですよ」
「……はい、申し訳ございません」
「つい頭に血が上ってしまいました。反省しております」
「分かって下さればいいのです」
二人に向けて女神のような慈愛に溢れた笑みを向けた後で、カムイ様がこちらを振り返った。
「ツバキさん」
「……はい」
「今のあなたは、白夜からわざわざ来て下さった大使様です。私なんかじゃ、釣り合いません」
「そんな、事は」
「ありますよ。それに……」
彼女が一歩近づいた。顔を上げた彼女の瞳には、とても悲しそうな色が映っている。
「戦闘中に起こった事は、人の気持ちはさておき結局お互い様です。だから、貴方が私に何をしたとしても、責任を感じる必要はないんです」
「何を……」
「貴方は、優しくて真面目な方だから。だから、一時の過ちでも手をつけてしまったのなら責任を取ろうと、そういう心づもりなのでしょう? でも、そんな責任は無用という事です」
一瞬だけ。一瞬だけカムイ様の瞳が鋭く光り、こちらを睨みつけた。しかし、すぐに眉尻も目尻も下がって元の位置に戻る。
「そんな、事は……」
彼女は何を言っているのだろう。責任感? 一時の過ち? あの時の事は、全て間違いだったと言いたいのだろうか?
「あの時の事は忘れましょう。それがお互いのためです」
「何を、言っているんですか……?」
「そのままの意味ですよ。ツバキさんには白夜のお嬢様の方がふさわしいです。どっちつかずの私なんかよりも」
そう吐き捨てるように告げたカムイ様が、臣下二人の方を向く。そして、だいぶ遅れてしまったから急いで会場へ行きましょうと声をかけた。
去っていく三人の背中を、茫然と見つめていた。
***
流石にパーティーの日の一件が堪えて、俺はしばらくの間立ち直れずにいた。
一緒にいよう、傍にいよう、と。何度もそう告げているにもかかわらず、彼女は俺が責任をとるため、世間体のためだけに言い寄っていると思っているのだ。責任感だけで言い寄っているならば、彼女に会いたいがために二階のバルコニーから飛び降りたりしないだろうに。
あれ以来、さらに彼女に近づきにくくなってしまった。自業自得と言えばそれまでだが、彼女を見かけて話しかけようとしても、メイドや執事にことごとく阻まれた。そして、挙句の果てには俺の生活圏に姿を現さなくなってしまった。王都に住んでいる俺の目に入らないようにするには相当の苦労がありそうな気がするが、それでも構わない位にあちら側は警戒しているのだろう。
(どうしたら、彼女は振り向いてくれるのだろうか)
いや、答えは見えているのだ。まずは、彼女に想いをはっきり告げなければならないだろう。愛していると、貴女を心から慕っているのだと、瞳を見つめながらはっきり言葉にして、愛情を注ぎこんでいかないといけないだろう。
しかし、彼女と顔を合わせる事すら難しくなってしまった現状ではそれが難しい。ならば、まずは彼女を何とかしてここに連れ込んでしまわないと。そうしないとゆっくり伝える事すら出来ない。彼女の行動範囲や生活の様子を調べて、一人になる隙を何とかつかないと。
(……長丁場になりそうだな)
ふーっと大きくため息をついた。しかし、諦める気は微塵もなかった。
***
彼女に愛情を告げようと決めたその日から、さらに半年がたった。相変わらず、彼女には会えないままだ。
そんな中、急に仕事が休みになったため、その日は久々に相棒に乗って空の旅を楽しんでいた。最近ではあまりこうして出かける事が無くなっていたため、相棒は嬉しそうだ。
「うわあああああん!!」
戦場にいた時のように、風を切りながら駆けていると、地上の方から子供の泣き声が聞こえてきた。何だろうと思って覗いてみると、森の中で小さい子供が一人で泣いているのが見えたので、慌てて下降して傍まで行った。
「ねぇ、どうしたのー?」
そう声をかけると、四歳くらいのその子はこちらを振り向いた。カムイ様と同じ銀色の髪をしている、可愛らしい女の子だ。
「あのね、あのね、かあしゃんとね」
ひっくひっくとしゃくりあげながら、一生懸命話してくれる。とんとん、と女の子の背を叩きながら続きを促した。
「かあしゃんとね、はなれちゃったの」
「離れちゃったのかー」
「おさんぽだからっておててつないでたのに、はなれちゃったの」
「そっかー」
「ここどこ? かあしゃんどこ?」
「ここはね、獣狩りの森の中だよ」
「けもの?」
「うん。お肉とか取る所だよ」
「おにく!!」
「そう。お肉好き?」
「好き! かあしゃんとみんながつくってくれるの、おいしいの!」
「へぇ。そうなんだねー」
女の子がきゃっきゃと笑いだしたので、少し安心した。よいしょ、と抱っこしてあげると、さらにはしゃぎ出す。笑った顔が、誰かに似ているような気がした。
「かあしゃんももりにいるの?」
「それは、探してみないと分からないなー」
「さがす! マトイもさがす!」
「君はマトイっていうの?」
「うん! かあしゃんがつけてくれたの!」
「そうなんだー。マトイちゃんっていうんだねー」
「うん!」
得意げに頷くマトイちゃんを、肩に乗せた。そして、肩車してあげながら彼女の母さん探しを始める事にした。
(続)
***
「カムイ様、カムイ様ですよね!?」
「ツバキさん? どうして、ここに……」
「バルコニーから貴女が見えたんです。あぁ、本当に本物のカムイ様だ……」
驚いている彼女を逃がすまいと、手首を掴んで体ごと引き寄せた。力いっぱい華奢な体を抱き締めると、彼女の芳香が胸いっぱいに広がった。
「夢じゃないんだ、本当に、会えたんだ」
「……あの」
「カムイ様、カムイ様……」
感動で麻痺した頭では、気の利いた言葉なんて出てこなかった。ひたすらに名前を呼んで、離さないように抱き締める事しかできなかった。
「……あの、苦し……」
「嫌です、もう絶対に離しません。もう貴女を離さない」
そう言って更に力を込める。軽く頬ずりすると、彼女の頬が熱を持った。
「カムイ様、今度こそずっと一緒にいましょう。離れないで、ずっと共にいましょう」
「え?」
「俺はしばらく暗夜に常駐するから、貴女が暗夜を離れる必要もありません。今度こそこれからも一緒にいましょう!」
一息でそう告げ、彼女の体を抱き上げた。前みたいに可愛い悲鳴を上げた彼女の頬にしっかりと口付け、住まいにしている建物の方へと歩き出す。
「ちょ、ちょっと待って下さい! どういう事ですか!?」
「そのままの意味ですよ? あぁ、落としてしまうといけないから、あんまり暴れないでください」
「待って下さい! 話を聞いて!」
「話ならいくらでも出来ますよ。これからはずっと一緒なのだから」
「ツバキさん! 待って!」
「待たない」
話を打ち切り、更に歩を進める。しかし、あんまりにも彼女が騒ぐので、大人しくさせるために一度立ち止まって彼女を降ろした。
「どういう事なのか、ちゃんとせつめ・・・っ!!」
大人しくさせるならば、静かにさせるならば、口を塞いでしまうのが一番だ。そう思って、彼女の両頬を包んで強引に口付けた。懐かしい感触に、頭の芯が蕩けていく。
それでも彼女は必死に抵抗してきたので、腕を腰に回してしっかりと抱きしめ口腔に舌を差し込んだ。互いの舌が音を立てて絡んでいき、体の奥が熱を帯び始める。
「ん、ふ……」
彼女の体が震えだした。抵抗する力が弱々しくなってきて、後もうひと押しで彼女は俺に体重を預けてくれるだろう……という所まで来たのが分かった。
「ふぁ……ん……」
ぐらり、と彼女の体が傾いだ。これで連れて帰れる、と喜んで抱き上げようとしたその時、暗器が背中をかすめた。
暗器が飛んできた方を振り向くと、そこには氷のメイドとカムイ様の執事がいた。月が陰った暗い中でもはっきりと分かるくらい、二人とも青筋を立てて怒っているのが分かる。
「何をしているの!?」
「カムイ様、御無事ですか!?」
二人が同時に叫ぶ。そして、どこに持っていたのかと言いたくなるくらいの暗器が俺に向かって放たれた。流石にこれは避けきれないな、と思って覚悟を決めた所で、強い力に引かれて前につんのめった。
「……大丈夫ですか?」
心配顔のカムイ様が、こちらの顔を窺いながらそう告げてくれた。
「ええと、はい」
「そう。よかった」
そう言って淡く微笑んだカムイ様が、俺の腕からするりと抜け出した。そして、殺気立っている臣下たちの方へと駆け寄る。
「二人とも、どうしてここに?」
メイドと執事に話しかける様子が、やはり彼女が王女である事を思い出させた。穢す事など叶わない、どこまでも清らかな、お姫様。
「それはこちらの科白です!」
「そうですよ! 『馬車を降りた後は正面の入口からお入り下さい』とあれほど申し上げましたのに!」
「それなのに、なぜこちらを通ったのですか!?」
「こちらは人気が少ないから、決して近づかれないようにとお伝えしておりましたのに!」
「……すみません、わかりました。わかりましたから、二人とも落ち着いて?」
「そんな悠長にしている場合ですか! もう少しで襲われる所だったのですよ!?」
「おまけに、相手は以前にも貴女を……!」
そんなメイドの叫びは、カムイ様がメイドの名を叫んだ事でかき消された。メイドは、カムイ様からの叱責を受けて、うなだれながら申し訳ございませんと謝罪を口にする。
「お二人が私の事を気遣って下さっている事も、私のためにと一生懸命なのもよく知っていますし、いつもありがたいと感謝しています」
「「カムイ様」」
「でも、この方は……ツバキさんは、今は白夜王国から派遣された大使様です。彼の身に何かあれば、白夜との関係が再び危うくなる恐れがあるんですよ」
「……はい、申し訳ございません」
「つい頭に血が上ってしまいました。反省しております」
「分かって下さればいいのです」
二人に向けて女神のような慈愛に溢れた笑みを向けた後で、カムイ様がこちらを振り返った。
「ツバキさん」
「……はい」
「今のあなたは、白夜からわざわざ来て下さった大使様です。私なんかじゃ、釣り合いません」
「そんな、事は」
「ありますよ。それに……」
彼女が一歩近づいた。顔を上げた彼女の瞳には、とても悲しそうな色が映っている。
「戦闘中に起こった事は、人の気持ちはさておき結局お互い様です。だから、貴方が私に何をしたとしても、責任を感じる必要はないんです」
「何を……」
「貴方は、優しくて真面目な方だから。だから、一時の過ちでも手をつけてしまったのなら責任を取ろうと、そういう心づもりなのでしょう? でも、そんな責任は無用という事です」
一瞬だけ。一瞬だけカムイ様の瞳が鋭く光り、こちらを睨みつけた。しかし、すぐに眉尻も目尻も下がって元の位置に戻る。
「そんな、事は……」
彼女は何を言っているのだろう。責任感? 一時の過ち? あの時の事は、全て間違いだったと言いたいのだろうか?
「あの時の事は忘れましょう。それがお互いのためです」
「何を、言っているんですか……?」
「そのままの意味ですよ。ツバキさんには白夜のお嬢様の方がふさわしいです。どっちつかずの私なんかよりも」
そう吐き捨てるように告げたカムイ様が、臣下二人の方を向く。そして、だいぶ遅れてしまったから急いで会場へ行きましょうと声をかけた。
去っていく三人の背中を、茫然と見つめていた。
***
流石にパーティーの日の一件が堪えて、俺はしばらくの間立ち直れずにいた。
一緒にいよう、傍にいよう、と。何度もそう告げているにもかかわらず、彼女は俺が責任をとるため、世間体のためだけに言い寄っていると思っているのだ。責任感だけで言い寄っているならば、彼女に会いたいがために二階のバルコニーから飛び降りたりしないだろうに。
あれ以来、さらに彼女に近づきにくくなってしまった。自業自得と言えばそれまでだが、彼女を見かけて話しかけようとしても、メイドや執事にことごとく阻まれた。そして、挙句の果てには俺の生活圏に姿を現さなくなってしまった。王都に住んでいる俺の目に入らないようにするには相当の苦労がありそうな気がするが、それでも構わない位にあちら側は警戒しているのだろう。
(どうしたら、彼女は振り向いてくれるのだろうか)
いや、答えは見えているのだ。まずは、彼女に想いをはっきり告げなければならないだろう。愛していると、貴女を心から慕っているのだと、瞳を見つめながらはっきり言葉にして、愛情を注ぎこんでいかないといけないだろう。
しかし、彼女と顔を合わせる事すら難しくなってしまった現状ではそれが難しい。ならば、まずは彼女を何とかしてここに連れ込んでしまわないと。そうしないとゆっくり伝える事すら出来ない。彼女の行動範囲や生活の様子を調べて、一人になる隙を何とかつかないと。
(……長丁場になりそうだな)
ふーっと大きくため息をついた。しかし、諦める気は微塵もなかった。
***
彼女に愛情を告げようと決めたその日から、さらに半年がたった。相変わらず、彼女には会えないままだ。
そんな中、急に仕事が休みになったため、その日は久々に相棒に乗って空の旅を楽しんでいた。最近ではあまりこうして出かける事が無くなっていたため、相棒は嬉しそうだ。
「うわあああああん!!」
戦場にいた時のように、風を切りながら駆けていると、地上の方から子供の泣き声が聞こえてきた。何だろうと思って覗いてみると、森の中で小さい子供が一人で泣いているのが見えたので、慌てて下降して傍まで行った。
「ねぇ、どうしたのー?」
そう声をかけると、四歳くらいのその子はこちらを振り向いた。カムイ様と同じ銀色の髪をしている、可愛らしい女の子だ。
「あのね、あのね、かあしゃんとね」
ひっくひっくとしゃくりあげながら、一生懸命話してくれる。とんとん、と女の子の背を叩きながら続きを促した。
「かあしゃんとね、はなれちゃったの」
「離れちゃったのかー」
「おさんぽだからっておててつないでたのに、はなれちゃったの」
「そっかー」
「ここどこ? かあしゃんどこ?」
「ここはね、獣狩りの森の中だよ」
「けもの?」
「うん。お肉とか取る所だよ」
「おにく!!」
「そう。お肉好き?」
「好き! かあしゃんとみんながつくってくれるの、おいしいの!」
「へぇ。そうなんだねー」
女の子がきゃっきゃと笑いだしたので、少し安心した。よいしょ、と抱っこしてあげると、さらにはしゃぎ出す。笑った顔が、誰かに似ているような気がした。
「かあしゃんももりにいるの?」
「それは、探してみないと分からないなー」
「さがす! マトイもさがす!」
「君はマトイっていうの?」
「うん! かあしゃんがつけてくれたの!」
「そうなんだー。マトイちゃんっていうんだねー」
「うん!」
得意げに頷くマトイちゃんを、肩に乗せた。そして、肩車してあげながら彼女の母さん探しを始める事にした。
(続)
- テーマ:二次創作:小説
- ジャンル:小説・文学
- カテゴリ:暗夜ツバカム(FEif)
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